水泉動(すいせんうごく)

2022/1/10 掲載

小寒(二十三節気)次候 第六十八候 110日~114日頃

 地中の凍った泉が動く頃です。 

 太陽の照らす勢いも徐々に増し、地中では氷が融け出していきます。寒さ厳しい中にあって、見えないところでは春に向かって準備をしているのですね。

 でも、見える風景はまさに「冬枯れ」、雪でも積もれば「山水画」へといざなってくれるのでしょうか?

 今は不自由なく暮らせる時代に感謝。

 古人の生活が厳しい自然との闘いの中でも、「花鳥風月」などを愛でる世界をつくりあげてきました。

 未来は、ますます進むであろうICT社会、ロボットに依存する社会、VR(バーチャルリアリティ)・メタバース(コンピュータ・同システム等を駆使した仮想空間)で繰り広げられる商業空間・ゲーム空間、宇宙旅行など、人間の夢は果てしなく続くようです。

 人々が幸せになるなら結構、なのですがと私たち年配の世代の人はどこまでついていけるのでしょうか? でも「人生は一生勉強」とも、最後まで付き合ってみましょうか? 

 稀有な科学者などにより発明・開発された画期的なものは「技術革新」を経て良し悪しは別として拡がっていくのが世の常です。

 ただ、この先も自然を愛でる心だけは失いたくないものです。

 皆様はいかがお考えでしょうか?

 さて、1月11日は関東地方等では「鏡開き」。(関西地方等では松の内が15日の日が多いので実際の鏡開きは20日?)伊勢神宮のある「おかげ横丁」では「鏡開きぜんざいのお振る舞い」があり神様の宿る鏡餅のおすそ分けをいただき一年を無病息災を祈るそうです。そういえば、昔の勤務先で「振る舞いぜんざい」をその年の厄年の人が振舞っていたのを懐かしく思い出します。

 餅を刃物で切るのは避け木槌などで割って砕きますが、「鏡割り」、「鏡切り」では縁起はよくないから「開く」にしたのでしょうか? また、鏡餅を食べることを「歯固め」といい、固いものを食べて歯を丈夫にして長寿を祈ったそうです。

 この時期の水は、寒気と乾燥で雑菌などの繁殖が抑えられて、とても澄んだ良い水質だそうです。そこで、この時期の酒造りを特に「寒仕込み」・「寒造り」と呼ぶようになりました。低温で「もろみ」をゆっくりと時間をかけて発酵させることで、きめ細やかな良質な酒ができると言われ、酒造りの主流になっていきました。

 清酒造りに好ましくない水は鉄分の多いもの。清酒が赤褐色に着色、味・香りを悪くするそうです。水1Lに占める鉄分が1mgを1ppmと言いますが、一般の水道水の水質基準は0.3PPM以下ですが、お酒造りに適した水はその1/10以下の0.02PPM以下。

 関西の酒どころ灘・伏見で使用する水は、それぞれ「宮水」・「伏水」(特に近鉄桃山御陵駅近くの「御香宮(ごこうのみや)」の「御香水」(ごこうすい))が特に有名です)と呼ばれています。宮水は軟水の多い日本においては珍しく硬度が高い水です。酒造に有用なカルシウム・リン・カリウムなどを多く含んでいるのも特徴です。六甲山近く、花崗岩質の砂層による濾過で不純物が除去され鉄分が少なくなっていること、また、その層には貝殻が多くあり、そこからミネラルが補給されるという酒造りにピッタリの仕掛けが自然に揃っていたということです。

 日本酒はアルコール度数が高く、遺伝的に体内のアルコール分解酵素の少ない日本人の嗜好は、ビール以外は炭酸・水で割っても飲みやすいサワー系、炭酸割(ウイスキー・焼酎ベースなど)に向かったようです。でも、美味しい日本酒は他の酒類に負けていません。

 かつて、特に明治時代は国家財政の要として酒税は大切な税でした。その後他の産業が伸びその比率は小さくなり、お酒離れなどにより経営も厳しくなり、豊富な土地を切り売り又は定期借地権形態での賃貸収入で本業の赤字を補填するなど苦心してきた歴史があります。最近は、外国での需要があり日本酒の輸出が増えていると聞いています。輸出なので酒税は国内には落ちませんが経営基盤の改善には多大な貢献をしますね。  大変な時代ですが、酒造家の方々には、日本独自の麹菌を利用した酒造りの伝統は、未来永劫、残していただきたいと切に願います。


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